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zoom RSS 米原万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』角川書店

<<   作成日時 : 2006/06/11 18:16   >>

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 米原万里様、謹んで哀悼の意を捧げます。

 正直、米原万里の作品はこれしか読んでない。しかし、この本は何度読んでも泣けてしまう。第33回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したこの作品だが、あまり賞とかに興味がない僕は、それで手に取ったわけではない。単に東ヨーロッパに興味があるマイナー趣味で、めずらしいなって感じで偶然手に取ったにすぎない。しかし、この本と出会った事に本当に感謝したい。

 父親が共産党から国際共産主義運動の理論誌『平和と社会主義の諸問題』の編集局に派遣されていた関係で、著者はチェコスロバキア(この国ももうないなあ)の在プラハ・ソビエト学校に通っていた。そこで出会ったギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ボスニア・ムスリム人のヤスミンカとの友情を綴ったものである。著者が日本へ帰った後、疎遠になっていた彼女達に、東欧革命後、無事を案じてその消息を尋ねていったマリの見たものとは…

 何が胸をうつのか、それは友への思いと自分への引け目だ。昔、友達だったけど、忙しさにかまけて会えなくなった友達って何人かいませんか?そしてその友達が激動の世界で苦しんでいるかもしれない中で、ぬくぬくと自分は暮らしていませんか?東欧の激動の世界情勢を知らせながら、何よりこの本は友への(それは自分への批判も含め)純粋な思いをそのまま言葉にしている。そこに僕は感動と共感を覚えるのだ。

 表題ともなった二話目のアーニャとの話に関しては、著者はむしろアーニャへは批判的だ。多くのルーマニア人が貧困にあえぐ中、アーニャは特権階級であったことを背景に裕福な暮らしをしている。そこは厳しく批判をしながら、しかし、完全には憎めない。そこには、個人としての友達としてのアーニャへの思いもあるからだ。アーニャと国の関係とアーニャと自分との関係に戸惑いながら、筆者は複雑な思いをそのまま語っている。

 そして三話目のヤスミンカとの話では、ユーゴ民族紛争の最中、友達に会いに行く。ただ単に友達に会いに行くということが、あの時期いかに難しかったか。ヤスミンカがボスニアのサラエボにいるかもしれない、となって
 「でも地続きでしょう。行こうと思えばいけるんでしょう」
 「ちょっと待ってよ、米原さん、何言い出すの!?国境は完全に閉鎖されてんのよ。今の冗
  談でしょ!?そりゃあ、行こうと思えば行けるけど、命がいくつあっても足りないよ、こない
  だ、ボスニアからクロアチア人勢力のテロを逃れて国境を越えようとしたセルビア人難民
グループが国境の手前でクロアチア勢に襲撃されている。成人男性の100名近くが全員
  虐殺された。女は陵辱され、五歳未満の少年達は全員おチンチンをカットされたのよ」
 「・・・」
 おそらく筆者は分かっていたと思う、それでも言わずにはいれなかった。しかし、どうしようもない状況なのだ。現実がそのままこちら側に届く。

 筆者が友達と会えるようになり、会いに行く、となった時は、何かこっちまでどきどきする。それは、我々がそこまではなくても、久々にあう友達とか、少し引け目のある友達とか、大変な状態にある友達とかと会う時の気持ちと同じなように思う。会いたいような、会いたくないような、でも会いたい。

 ああ、もっとこの人に本を出してほしかった。
 嘘つきアーニャの真っ赤な真実
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

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