平正盛から承久の乱までの物語。 この小説の特質は、先ず、平氏三代の栄華をタイトル通り海の視点から描いていること、伊勢平氏にとって海の道がいかに大事であったか、が描かれる。 次に、今まで平清盛を描いた物語はたくさんあるし、その過程で平忠盛が出てくる話もあるが、平正盛から書き起こすのは珍しい。さらに承久の乱を平氏の血を引く西園寺公望を通して描くのも珍しい。 さらに、平氏の栄華を描くけれども、その中心人物は平氏以外の人物の視点から描かれる章が多い。第一章は「渡し」の水竜、第二章は祇園女御、第三章は信西(藤原通憲)、第四章は平頼盛、第五章は西園寺公望、といずれも中心にはなりにくい人物が中心人物となっているが、かえって物語が分かりやすくなっている。 特に第三章の保元の乱・平治の乱のころは実際の政治の中心はまだ平氏源氏ではなく、藤原氏や皇族だったわけで、そっちを中心にもってきた描き方が非常にわかりやすかった。第四章は平清盛が衰亡していく過程が丁寧に描かれている。最近は平清盛が評価される流れにあり、それはそれで良いのだけど、ちょっと強引さもある。この本は平清盛がなぜ、失敗したかが感情豊かでありながら、冷静に分析されて描かれており、非常に分かりやすい。 第一章はちょっと読みにくかったが、第二章で祇園女御が出てきたところで、ああ、なるほど、そうなったか、と感心し、その後は一気に引き込まれ、上下巻一気読みとなった。面白かったです。 |
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