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zoom RSS 塩野七生『コンスタンティノープルの陥落』新潮文庫

<<   作成日時 : 2006/02/26 03:20   >>

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オスマン=トルコVSキリスト教国を書く、地中海三部作の第一作目。

塩野七生は現在では大著『ローマ人に物語』で大ヒット作家になっているが、このころはそこまでほどではなかったと思う。高校時代、なかなかヨーロッパの歴史小説がない中で、この本を発見し、
夢中になって読んだ思い出が、この本を読めば思い出す。
世界史を勉強するものにとっては、入門書として最高の本だと思う。
そして何より内容の濃さに比例して、ページ数は250p程で薄くて、360円と安い。世界史に興味を持った高校生に絶好の本である、と声を大にしてオススメしたい。

内容はタイトルの通りである。分かりやすい。
古代ローマ帝国の東西分裂後、西ローマ帝国はすぐに滅んだが、東ローマ帝国は残った。
しかし、その東ローマ帝国(ビザンツ帝国)も分裂後1000年を経て、とうとう最後の時を迎える。
ヨーロッパとアジアの交差点、現イスタンブールはかつての東ローマ帝国の首都、コンスタンティノープルである。東ローマ帝国の領土は、物語の時代の15c半ばには、このコンスタンティノープルとその周辺だけになっていた。そしてそこに名君が率いるオスマン=トルコがせまる。

この作品の非凡であるところは、出てくる登場人物が全て(多分)実在の人物であり、
なんらかの証言を後世に残しており、それを元にして書かれていることだ。
『第一章 二人の主人公』で紹介される、
オスマン=トルコ(最近はオスマン帝国と呼ぶ)皇帝のマホメッド二世(メフメト2世)と、
ビザンチン帝国(ビザンツ帝国・東ローマ帝国)皇帝のコンスタンティヌス11世をめぐる人々が、
『第二章 現場証人たち』で紹介され、かれらの行動を通じて、最後まで語られる。

現場証人たちとは、
・ヴェネツィアの医者、ニコロ=バルバロ
・ヴェネツィア人商人、ヤコポ=テダルディ
・セルビア軍人、ミハイロヴィッチ
・ローマ教皇からの使者、イシドロス枢機卿
・ギリシア正教修道士、ゲオルギオス
・ゲオルギオスの弟子の学生、ウベルティーノ
・コンスタンティノープルのジェノバ人居留区代官、アンジェロ=ロメリーノ
・ビザンチン帝国大蔵大臣で皇帝の側近、フランゼス
・オスマン=トルコ皇帝の小姓、トルサン
彼らはいずれも、後に著作や報告を残した人物であり、それによって「コンスタンティノープルの陥落」の一部始終が分かるのである。

ただ、これだけ登場人物がいると、分かりにくいか。この第二章までは、どんどん登場人物が出てきて混乱するかもしれないl。そこでもう少し解説を。
・ヴェネツィアとジェノバは北イタリアの二大都市国家である。商売上のライバルである両国は、あま り仲はよろしくない。二国とも通商に大きく力を入れており、ビザンチン帝国とも、オスマン=トルコ
 とも商売上のつながりがある。
・セルビアは東ヨーロッパの国、オスマン=トルコに服属しており、コンスタンティノープルの陥落   後、しばらくして完全にオスマン=トルコの支配下に入る。現在から少し前、ユーゴスラヴィアの
 平和をセルビア人が打ち破った原因の一つは、このセルビアの持つ長らくオスマン=トルコに支
 配されていた事への鬱憤、トラウマにあると思うが、その一端もこの物語で知ることができる。
・ローマ=カトリックとギリシア正教は同じキリスト教でありながら、違う宗派であり、お互いに長い間
 対立してきた。
この辺を頭におきながら読むと、だいたい分かると思う。
この第二章さえ乗り切れば、後はジェットコースターの様に、没頭して、夢中になって読める!
親切に地図も裏表紙をめくったところに付いているので、それを見ながら読むと分かりやすいだろう。本文中にも随所に地図や図説が付いている。

最初のヤマ場はここだ!
ビザンチン帝国側は、唯一の弱点金角湾に鎖を張って、トルコ側の海軍を入れなくし、
何とかオスマン=トルコを撃退していたが、オスマン=トルコ皇帝マホメッド2世は奇策を思いつく。
その策とは!
そして陥落後の登場人物の後日談も、エピローグで丁寧に描かれる。
感動するぐらい、きっちりした構成で、起承転結+エピローグでまとめられている。
ぜひぜひオススメだ。

本作は最初に紹介した通り、地中海三部作の一作目だ。
二作目の『ロードス島攻防記』では、マホメッド二世の三代後の最盛期の皇帝スレイマン1世VS聖ヨハネ騎士団の戦いが書かれる。
三作目の『レパントの海戦』では、オスマン=トルコの拡大をついに止めた海戦が書かれる。
いずれも、その内、紹介する予定だ。
また、もし、ヴェネツイアに興味を持てば、同じく塩野七生の『海の都の物語』中公文庫がオススメだ。ただこれは、上下巻だし、上下共に分厚く、ヴェネツイア通史といった感じなので、中級者向き
だろう。

ただ一つ、塩野七生の作品は、国の呼び方や、人物の呼び方が正確ではなく、
読みやすく(聞こえがよく)なっていると聞いたことがある。
また、この本が書かれた時と今では、呼び方が変わっているものもある。
まあ、国、人物の呼び方なんて、英語読みか、現地語読みかだけでも違うし、
少なくとも普通に小説を読む分には何の問題もない。

次の本の紹介は、宮城谷昌光の検索からここを訪れてくれた人がいるみたいなので、氏の作品
にしようと思う。来てくれた人がまた来てくれるとは限らないけれど。中国史ですな。
何にしようか、考え中。一番好きなのは『晏子』なのだが地味なんだよなあ。どれにしよう…

うわ、Amazonで検索したら460円になってる!15年前は360円だったのに!まあ、でもまだ安い方だよね。

コンスタンティノープルの陥落
コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)

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